親指Blog

キーボードによる文字入力関連(主に親指シフト)のBlogです。過去記事には色々入ってますが気にしないでください。

まだまだ練習中

 早いもので前回のエントリーからすでに半年が経ってしまった。

 現在どうなっているかというと、相変わらず蜂蜜小梅を練習中というところだ。
練習を開始したのは去年の10月末。すでに1年以上経つのにまだ練習というペースの遅さには、自分でも驚いている。

 さてその上達具合はというと、それほど芳しくない。まあ練習と言えるほどの練習はしていないし、今年は文章を打つ頻度が激減したため、このペースになってしまっているという感じだ。
 とりあえずもう意識せずに大体のキーは打てるようになっている。それでもまだ実践ではなく「練習中」というのは、どうしても乗り越えられない障害があるからである。

その障害というのが、蜂蜜小梅最大の特徴である「マトリックス」であるというのが皮肉だ。

 ”しゃしゅしょ”などの拗音を1ストロークで打てるマトリックスは、使いこなせれば素晴らしい武器になる。その実感は掴んでいるのだが、これがどうしても覚えきれない。

 このマトリックスでは、キーの並びが「S:しゅ」「D:しょ」「F:しゃ」となっていて、右から読むと「しゅ」と「しょ」が入れ替わっている。これに全く慣れる気配が無い。毎回打ってみてから修正しているが、意識して打っても間違う体たらくである。一時はもう諦めて、拗音を別に打っていたこともあるほどだ。ただこの拗音も「Z:ゅ」「X:ゃ」「C:ふ」「V:ょ」となっていて語順と並びがズレており、こちらでも間違うことが多いため、こちらも諦めてマトリックスに戻ってきて練習中なのである。

 マトリックスはマス目状に綺麗に並んでいるからこそ、この並び順の些細な違いが脳内に定着しないのではないだろうか。

 そこで改めて文字の出現頻度を見てみると、「ょ」の頻度が最も高く、「ゃ」と「ゅ」はそれほど変わらないことがわかった。

61degc.seesaa.net

 

 蜂蜜小梅の運指重要度は中指>人差し指>薬指なので、「ょ」が中指に来るのは正しい方針ではあるのだが、ここまで覚えられないと別に「ょ」が人差し指に来てもいいのではないかと思ったりもする。特に単体の「ょ」は人差し指なのだし。(左手下段も「ふ」が最頻度で、そこから「ょ」「ゃ」「ゅ」になるので間違ってはいないのだが。)

 とはいえ今の時点でも慣れられない現実を考えると、どうせ他の人が使う訳でもないのだから、キーマップを順番に「D:しょ」「S:しゅ」「F:しゃ」と変更しようかと考えているほどだ。


 まあ簡単に慣れる人にはあまり関係がないのだろう。もうちょっと様子を見て、どうしてもダメなら実行に移そうと思う。

 

復帰

 141Fさんからコメントをいただいて、ご返事をあれこれ書いているうちに仕事が一番忙しい時期に来てしまい、ここが放置状態になってしまった。どうにか山を越えたようなので、またぼちぼち書いていきたいと思う。

 ご返事もまだ書けていないが、とりあえず蜂蜜小梅の現状を書いておこう。
 現在ではすでにこういう文章をゆったり書くのには、ほぼ不自由しなくなった。とはいえ急いで書かなければいけなくなったり、確実性を求められる場合はまだローマ字入力を使う。文章を考えなければいけないときも、やはりローマ字入力だ。やはりまだ頭を使わずに指先だけで書くというわけにはなかなかいかない。もう蜂蜜小梅に移行して半年以上経っているが、必死に練習しているわけではないのでこんなもんだろう。

 以前から間違いまくっている「き」と「く」は相変わらず間違えることが多い。まあ徐々に間違いは少なくなってきているので、あまり気にせずそのまま慣れるに任せている。
 最近多い間違いは「る」と「ろ」だろうか。同じような字で同じ左人差し指の受け持ちなので間違いやすいのかもしれない。と言うか、私は左人差し指が苦手なのかもしれない。実はホームポジションである「さ」を押すのも結構違和感があるのだ。「かさた」は左ホームポジションで押しやすいのにもかかわらず、意外と間違えたり戸惑ったりする。自分でも結構不思議だ。


 さて、今回はソフトだけでなく、ハードの話題もある。

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 この度、やっと念願叶ってHHKBproJを手に入れた。HHKBproJは前から欲しかったのだが高価なためなかなか手が出ず、悔しい思いをしていたのだ。これで以前かもめ~る通信の加茂さんに作っていただいた親指シフトキットがやっと日の目をみることになった。(周りが黄ばんでるように見えるって? もちろん中古である。)
 使用感は噂に違わず気持ちいいキータッチで、ほぼ不満無く親指シフトが可能だ。私は既に東プレのRealForceを所有しているので、同じキースイッチを使うHHKBだと違和感は全く感じない。proJでたまに話題となるZのキーレイアウトも、私には全く問題なかった。(HHKBproJはZキーが1/4キー分だけ左にズレており、そのせいでミスタッチする人がいるようである。)

 実はHHKBproJを買う前に、HHKB Lite2Jを購入していたりするのだが、こちらも改造して親指シフトモデルにしようと画策しているところだ。(3Dプリンターがあれば簡単なのだが……。)
 
 とりあえずはこんな感じでたらたらと。
 ちなみにここまで全て蜂蜜小梅で書いた。そろそろタイプウェルでもやってみようかと思う。

 

閑話:蜂蜜小梅の現状

 最近ローマ字入力のことばかり書いているので、親指ブログとしてここらへんで閑話。

 

 昨年末から練習している蜂蜜小梅入力は、ほぼスムーズに入力できるようになってきた。まだ速度を計測するレベルではないけど、とりあえずはまどろっこしさをギリギリ感じずに打鍵できている。

  だが、「き」と「く」は未だによく間違う。理由はわかっている。この二つのキーはNICOLAとちょうど逆の配置になっているのだ。これはもうNICOLAを使った経験があるならどうしようもないのかもしれない。分かっていても間違うので、もう最近ではあまり気にせずとりあえず打ってみて、間違ったら修正するという流れにしている。

  また、相変わらずぴぱぽぷぺが覚えられない。「ぷ」と「ぽ」はVキーとZキーで出るので割と入力に困らないのだが、「ぱぴぺ」は「;+GFA」で入力しようとしているので結構混乱する。どちらかに統一すればいいのは分かっているのだが、文を考えているときはあまり頭を使いたくないので、わかっている方(VとZ)を使ってしまうのだった。

 

 あと、蜂蜜小梅でも右小指は疲れる。ローマ字のその4にもかいたが、やはりENTERを小指で打つのが問題かもしれない。(まあENTERを薬指で打っても小指にダメージが行っている気がするのだが。)

 そもそも句読点が小指の受け持ちというのがちょっと納得いかない。Pの打鍵を避ける蜂蜜小梅なら、小指への負担軽減ももう少し考えて欲しかった所だ。私はPの打鍵にそれほど抵抗がないので「ね」をPの単独打鍵に割り当てている。蜂蜜小梅では本来の「ね」の位置は右シフト+「:」なので、右シフトをミスタッチすると「BS」になってしまうのが凄く嫌なのだ。小指の使い方はもう少しオリジナルの配列に修正したほうが、自分にはあっているかもしれない。

 

 しかし、なぜローマ字入力であれだけ酷使されていても、左小指は痛くならないんだろうか? 右小指でもENTERを叩きさえしなければ、小指が痛むこともないんだろうか。ちょっと気になるところだ。今後のローマ字入力のチューンナップで試していこうと思う。

  とりあえず閑話休題だが、次回も閑話っぽい。

 

ローマ字入力のチューンナップその1

  では今回からローマ字入力の改良に取りかかるが、ここでまず考えなければいけないのは、その方針だ。つまり、「どのように改良すべきか」である。

 

 前回までで述べたように、ローマ字入力の利点は「学習コストの低さ」だ。この利点を忘れて改良しても誰も使うことは無いだろう。だいたい大幅に変えるなら、行段系で優れた配列(SKY配列など)が既にあるし、新しい配列を覚えるなら、かな系の配列を覚えた方が確実に効率は上がる。それではローマ字入力自体のチューンナップとはならないだろう。

 

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 また、右手側と左手側のキー配置にも注意が必要だ。実は一度、Aのキーを「;」に割り当て、左手小指の負担を減らそうとしたことがあるのだが、これが大失敗だった。ローマ字入力は打鍵時に頭の中で矢印が飛び交い、次のキーへのガイドとなっている。これを乱すと覿面に打鍵効率が下がってしまうのだ。もちろん慣れの問題ではあるのだが、これに慣れるというのは新しい配列を覚えるのとほぼ同義だと感じた。学習コストを下げるなら、右手側と左手側は変えないほうがいい。

 逆に積極的に使いたいのはB段だ。ローマ字入力では左手側のB段(ZXCVB)の使用率はかなり少ない。これらのキーをいかに有効に使うかが鍵となるだろう。

 

 そして最大の問題は、ホームポジション直下にありながら殆ど使われていないだ。だがこれは意外と難しい。なぜなら、既に人差し指はかなりハードに使われており、打鍵数の多いキーを割り振ると途端に全体が破綻する可能性がある。たとえばFとAを入れ替えたりすると、右手人差指には54000打鍵以上の割り当てとなり、もっとも負担が大きくなってしまう。

 とはいえ実際は人差し指2本で高速打鍵する人もおり、あまり気にする必要は無いのかもしれないが、改良するに当たって気に掛けておく必要はあるだろう。

 同様に「L」「;」もどう使うかも重要だ。特に「;」はローマ字に登録できないIMEもあるかもしれない。キーの打ち易さとしては7番目という上位に居ながら、小指ということもあり、扱いとしては1,2を争う難しさと言えよう。

 

 以上から、今回のローマ字入力の改善方法として、以下の方針を立てる。

  1. 学習コストをできるだけ下げる
  2. キー配置は(できるだけ)左手側右手側で入れ替えない
  3. B列を有効に使う
  4. 各指の打鍵バランスを(できるだけ)取る
  5. 小指の移動をできるだけ少なくする

 方針の5は私の好みでもあるのだが、やはりもっとも弱い指である小指はできるだけ動かしたくない。たとえ今まで最多打鍵をしていたとしても、それはやはり受け持ちの殆どがAのみであるから疲れなかったと考えられる。NICOLAのようにD段に小指の受け持ちキー(、と。)を設定すると、小指の消耗が激しいと思うのだ。(私はローマ字入力時のPですら薬指で打っている。)

 

 以上の方針をベースに、ローマ字入力の改善を行って行きたい。

 

ローマ字配列が愛される理由その4+まとめ+おまけ

 ではいよいよ最大の問題、各指の打鍵数の問題に迫ろうと思う。

 

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 図の下にある両手と各指の打鍵数を見てみよう。前回も書いたとおり、左小指の打鍵数が多く右小指の打鍵数は極端に少ない。左手小指の負担の多さは否定できないところだ。

 だがそこで、ちょっと見方を変えてみる。左右小指を除くと、人差し指から薬指にかけて順番に数が少なくなっていく。これはバランスのとれた打鍵数と言えなくはないだろうか? 

 もちろんだからと言って小指の問題を無視するつもりは無い。だがこの問題はふたつに分けて考えるべきだ。ひとつは先述の「左小指の打鍵数過多の問題。もうひとつは「右小指の打鍵数過少問題である。 まずは右小指の過多の問題から考えてみよう。

 

 表を見ると右小指はPと記号系を受け持ち、打鍵中はほとんど使われることはない。394と言う数字は全打鍵数の約0.2%だ。左小指の約2万5000(12.5%)と比較するまでもなく、あまりに大差が付いている。もっと打鍵数の多いキーを割り当てるべきだと思う人も多いだろう。

 だが待って欲しい。本当に右小指はそんなにも仕事をしていないだろうか? ローマ字入力を行っていて、小指が痛くなるような経験はないだろうか?

 

 実は小指には多大な打鍵数を受け持つキーが存在がしている。ここまで言えばもうお分かりだろう。それは「ENTER」キーだ。

 同時打鍵かな入力でのモダンな配列である「飛鳥」では、Enterの打鍵数を全かなの10%と見積もっている。

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   10%という数字は個人によってまちまちで一概には言えないが、それに10万字のデータを当てはめれば1万字だ。これはかな1字に2打鍵使うローマ字入力でも変わらないため、そのまま1万打鍵追加となる。

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 小指に打鍵数が追加され、右手の各指の打鍵数は前述よりさらにバランスのとれたものとなった。 その上ENTERはホームポジションから遠いため、叩くようにキーを打つ人も多い。かなキーを打たなくても、右小指にかかる負担は、左小指に勝るとも劣らないのである。

(※とは言えENTERは、薬指や中指で打つ人も多いと思う。私自身もENTERは殆ど意識せずに打っているが、なんとなく意識すると小指だったり薬指だったりする。特に読点を打った後は薬指で、短い文字や英語を打った後は小指でEnterを打つことが多い。たぶん無意識に指の負担を分散して居るのだろう。その際は小指の負担率は変わるが、これはもう完全に人に寄るのでデータとしては採用しなかった。ここでは小指や薬指にもそれなりの負担がかかっていると分かって頂ければそれでいいと考えている。)

 

 以上がQWERTY及びローマ字配列が愛される理由である。まとめると、

  • キーの位置を10個覚えれば文章の8割以上が打ててしまう速習性(理由その1)
  • 左端からアルファベットがずらっと並ぶキーの検索性(理由その2)
  • ホームポジション(C段とD段)に打つキーの殆どが並ぶ打鍵率(理由その3)
  • (左小指を除く)各指の優れた打鍵バランス(理由その4)
  • 英語と日本語を同じキーで打てる汎用性(理由その他)

 と言った利点により、ローマ字入力は人々に浸透していったと思われる。ざっくり言えば、「ローマ字入力はとにかく早く覚えられ、(左小指以外は)負担が各指にバランスよくかかる入力方式」なのだ。入力効率が直接仕事に関係する人を除き、あまりハードに文字入力しない一般人にはこれ以上無い入力方式と言える。いくら効率がよいとは言え、学習コストの高いかな入力は駆逐される十分な理由となりえたのだ。

(※付け加えるなら、文字入力が上手くいかないというのは非常にストレスが溜まる。キーボードごとPCを投げ出したくなるほどストレスが溜まる。このストレスを突破できるのは、よほどの忍耐強さを持つ人か、突破した後に待つ気持ちよさを既に知っている人か、入力マニアぐらいだろう。既にローマ字入力をマスターしている人が、改めて別の入力方法を学習しようと考える人がごく少数であることは、現在を見れば誰でも分かることだ。)

 

 

 ・・・でだ。

 

 問題は左小指だ。だがこればかりは残念だが擁護のしようがない。左小指にAをもってきたのは覚え易さの為だとは言え、もっとやりようはなかったのかとつくづく思う。なにより当初はWキーの位置にAは配置されていたようなのだ。

 タイプライターからコンピュータへ:QWERTY配列の変遷100年間(1)

 それが覚え易さを理由に(?)今の位置に変えられ、以後ほぼ100年以上そのままとなっている。前述のように左から右へ流れるようにアルファベットを並べるなら、確かにC段左端のキーから始めるのが分かり易いだろうが、せっかくD段に母音を並べたのにAだけ左端では台無しなのだが・・・。

 

 右手小指の負担がいくら多い事がわかっても、左小指の打鍵数が突出している事実には何も変わりはない。では、その負担を減らすことができれば、ローマ字入力はもっと楽に効率よく打てるようになるのではないだろうか。次回からはローマ字入力のチューンナップを考えていきたい。

 

ローマ字配列が愛される理由その3

 さて、いよいよ本題の打鍵数である。

 まずは1回目同様DovrakJPのサイトのデータをキーごとに配置し、10万字の入力に対する打鍵数(ストローク)のデータを見てみよう。

 

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対してかなの出現頻度はこうなっている。

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  QWERTY配列はかな配列と比較すると打鍵数がほぼ倍となるので、10万字は約20万打鍵(ストローク)となる。本来1打ですむ筈のかなを2打で打っているのだから当然とも言えるが、そのおかげでかな入力ユーザーから「日本全体の生産性が悪化している」と言われるほど敵視されている訳だ。

 上図を見ると確かにその通り。かな入力で最大数の打鍵数である「い」の6653打鍵と比較すると、「A」は25130打鍵で4倍以上となってしまっている。同じかなである「i」の23949打鍵と比較しても4倍近い。

  また、左小指の打鍵数が多く右小指の打鍵数は極端に少なく、理想とする打鍵数分布からはほぼ遠い。10本の指の中でもっとも弱い小指(それも左)を酷使するのは、腱鞘炎などの恐れもある。キーレイアウトを見ても、半数以上打たなければならない母音が、打ちやすいホームポジションにA以外無く(そのAですら左小指だ)、D列に集中している。

 これでは効率があがろうはずもない。

 

 ……と言ったところが主な批判ではないだろうか。そして、それは本当だろうか?

 

 まず、キーレイアウトの問題を考えてみる。

 もっとも打ちやすいキーが配置されているべきC列。だがQWERTYローマ字入力ではその恩恵に預かることはできないのだろうか?

 そんなことはない。じつはローマ字入力でも、ちゃんとホームポジションは効率がよくなっているのだ。

 手のひらを見て欲しい。そのまま手から力を抜くと、自然と指が曲がる。その指の先は円弧を描いてはいないだろうか?

 キーボードのFに人差し指、Aに小指を置いた場合、中指と薬指の第2関節は人差し指と小指のそれより、少しだけ盛り上がってはいないだろうか?

 もちろん個人差はあるだろうが、大多数の人は上記の問いにYesと答えてくれるのではないかと思う。これが何を意味しているかというと、実は中指と薬指のホームポジションはC段ではなく、D段と言えるのである。

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                                    (2016/2/2 画像修正)

 改めて打鍵数のキーデータを見てほしい。QWERTYでもっともよく使われるキーが集まっているのはD段だ。本来なら、FJのホームポジションではなく、RUホームの方が理にかなっている。しかしこれはあまり良くない。なぜなら、RUに人差し指を置いてしまうと腕全体が上がってしまい、B段が押し辛くなる。そして何より、最後の母音「N」が非常に使い辛くなってしまう。

 また、タイプライターが開発された当初(QWERTY以前)は、母音であるAEUIOY(Yも母音扱い)はD段に配置されていたようだ。

タイプライターからコンピュータへ:QWERTY配列の変遷100年間

 このことから、タイプライターは元来D段をメインに使おうとしていたと思われる。D段はホームポジションから外れている段という訳では無く、C段とD段両方でホームポジションを形作っていると考えられる。すると上図での赤及びオレンジのキーはかなりの範囲をカバーすることが出来る。QWERTYの打ち易さの秘密の一つと言えるだろう。(2016/2/2一部改稿)

 

 この項が長くなってしまった。次回はさらに打鍵数の秘密に迫ろうと思う。

 

ローマ字配列が愛される理由その2

 前回は打鍵数から見るローマ字入力の学習しやすさについて述べた。今回と次回は最大の問題であるキーボード(配列)について述べてみたい。

 

 ローマ字入力が定着した背景のひとつにQWERTYキーボードがある。PCが英語圏からもたらされたもので、キーボードのベースがタイプライターである以上、QWERTY配列が標準になるのは当然の成り行きだろう。だが日本語どころか、英語にも入力効率が悪いと言われているQWERTY配列は、批判の対象にもなることも多い。

 しかしそう言われつつも、現在圧倒的大多数のユーザーを掴んでいるのは厳然たる事実だ。はたしてそれはなぜなのか? 

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 これは一般的なQWERTY配列のキーレイアウトだ。現在ではほぼ9割の人がこの配列を使っているようだ(又聞き)。アルファベットがランダム的に配置されているように見え、初めてキーボードを叩く人には覚え難い配列に思えるのではないだろうか。
 
 だが実はQWERTYは、意外と覚えやすい配列となっているのである。

 

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 上図を見てほしい。QWERTY配列は、ホームポジションがあるもっとも打ち易いC段に、左からほぼABC順に配置されている(SキーとBキーが入れ替えられてはいるが)のである。
 C段左端からA~Lまで並べ、折り返してB段にMNを配置。I、C、EなどはちょっとB段とD段にはみ出しているが、探し難いわけではない。O~UまではD段に配置。一応母音であるO、Uは小指を避けるぐらいの判断はついたようだ。
 V以降のアルファベットはB段とD段に適当に配置といったところか。

 ※2016/1/22追記:YはQWERTY成立以前の初期の段階で、母音としてD段に設定されていたようだ。 

タイプライターからコンピュータへ:QWERTY配列の変遷100年間(1)

 E、W、YをD段にしたのは、「TYPEWRITER」をD段だけで打てるように配置されたからと言われている。B段のB、C、Vの位置関係はちょっとした謎だ。適当なのか何か理由があるのか? これだけいい加減な並べ方だと出現頻度を調べたとはちょっと思えないが……。
 

 このようにQWERTY配列は、構造が分かってしまえば非常に覚えやすい配列だ。たった26キーで済むアルファベットや、前回のローマ字の覚えやすさとあわせると、学習コストの低さは他の配列の追随を許さないだろう。

 

 しかし、しかしだ。

 いくら覚えやすくても、打鍵数が多ければ効率は下がり手は痛む。QWERTY配列でのローマ字入力は特に小指への負担が大きいと言われている。次回はいよいよお待ちかね、ローマ字入力の打鍵数からQWERTY配列を見直してみたい。