親指Blog

キーボードによる文字入力関連(主に親指シフト)のBlogです。過去記事には色々入ってますが気にしないでください。

ローマ字配列が愛される理由その1

あけましておめでとうございます。今年もマイペースで進めていきます。

 

 さて、今更ながらローマ字入力の話題。

  先日からキーボード配列のデータとにらめっこしている。なぜかここに来て急にキー配列が気になりだし、色々データを見ているうちに面白いことに気づいた。なぜ入力効率が悪いと言われているローマ字入力がここまで広まり、確固たる地位を築いたのか。それは二つのデータが物語っていた。

(※ここではローマ字を習得済の中学生以上を対象に話を進めていく。ローマ字を未学習である子供たちへの学習時間はまた別の話となる。ちなみに現在の学校でのPC教育では、低学年はかな入力を、高学年でローマ字入力を教えているところもあるようだ。教えているかな入力が旧JISというのが困ったものなのだが…)

 

  一般的には、ローマ字入力が優れている点は、覚えるキー数が少ない点にあると言われている。アルファベットは26個しかなく、拗音などを含めると50個以上覚えなければならない日本語かなに比べ、半分以下でほぼすべてのかなが打てる。これだけでもすごいメリットなのだが、実は更に少ないキー数で打っていることがデータからわかった。

 まずCXLQの4キーは殆ど使わない。Cは「ちゃちゅちょ」などに使えそうに思えるのだが、MS-IMEATOKでは「chachucho」となっている。これでは基本的に打ちやすいTキーを使った「tyatyutyo」と入力する人の方が多いのではないだろうか。「cacuco」と打鍵した場合には「かくこ」となる。こちらは普通の人ならKキーを使うだろう。
 XやLキーを使う「ぁぃぅぇぉゃゅょ」などのかなは、単独で入力する機会がほとんどない。
 Qは「くぁ」などの特殊な音で、これも頻度は劇少の上、他のキーで代替が可能だ。

 この4つを省くと、ローマ字入力は、26-4=22キーを使っていることになる。

 

 そして更に少なくなる。

 

 下記の表は、DovrakJPのサイトにある、10万字の文章の打鍵データを分析したものだ。

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 約10万字(※)の打鍵数をみると、aioueの母音5キーに、母音「ん」として扱われるnを追加した6キーで、実に打鍵するかなの6割近くを占める。ローマ字入力は母音と子音のコンビネーションで打つものなのでこれは当然とも言えるが、これにtksrの子音4つ(計10キー)を加えると、驚いたことに打ちたい文章の8割以上のかなが打ててしまうのだ。
 そしてさらにyhmの3キーを追加して13文字、つまりアルファベットの半分のキー位置を覚えれば、文章の9割以上のかなが打ててしまうのである。

ローマ字入力なので打鍵数は約倍になるが、句読点や記号は省いたため、10万文字に達していない

 

 これが何を意味しているかというと、学習時間だ。キー配列の練習は反復練習である。同じキーを何度も使えば、必然的に覚える時間が短くなる。ローマ字入力を覚える際はまず母音aiueoの5キーを覚える。次に子音でntksrの5キーを覚えれば、もう殆ど打てるようになったも同然なのだ。キーボードのどこにかながあるのかわからない旧JISやNICOLAなどのかな配列との学習時間の差は、圧倒的と考えられる。

 また欠点として「英語のつづりと違うタイピングが必要(project→purojekutoなど)」という批判もあるが、これは見当外れだ。なぜなら今のFEPは、ローマ字入力からF10キーで直接英語に変換できるからだ。ATOKなど性能のいいFEPなら変換候補に出してくれるものもある。現在では批判にあたらないだろう。

 

次回は問題のやり玉に挙げられることの多いQWERTYキー配列について、もうひとつのデータを紹介したい。